Webディレクターに求められる8つの能力と、3つの心構え(2)
5.品質にこだわる姿勢

提出物に対してクライアントが何度も修正依頼をしてきたりクレームが入る場合、品質に問題があるケースが多いと感じます。
多くのプロジェクトを抱え、スタッフ共々疲労が溜まっているときに「これ位でいいか」と妥協してクライアントに提出してしまう事は往々にしてあると思います。しかし、達するべき品質を満たしていないことによって修正対応など更なる工数が発生してしまい、自分達の首を絞める事はよくあります。
提出物に対して 「まだ出来る事があるのではないか」 「詰められる事があるのではないか」と何度も考え検証し、これ以上は品質を高めようがないという状態でクライアントに提出する心構えが必要です。それが結果的には工数を減らすことに繋がります。
もちろん、Webディレクターは最終監督者として、とことん品質にこだわる必要がありますが、スタッフがそれにより疲弊していかないようにケアしていく事も同時に求められます。
6.技術職に対する理解
デザイナーやエンジニアなどの技術者は、戦略に沿うことよりも表現的な技術や技法を優先してしまうことが往々にあります。つくってもらったものが戦略に適合せず、かといってコミュニケーションをしてもその溝が埋らず、悩みの種になっているディレクターは多いと思います。
「そんな拘りはいいから、○○してくれよ!」 そう言いたい気持ちはわかりますが、ちょっと待って下さい。デザイナーやエンジニアなど技術職傾向の強い職種の方は、「先端の技術や新しい手法を試してみたい」「面白い事をしてみたい」といったことをモチベーションにしている方がほとんどです。彼らは自分の挑戦してみたいことを潰される事を嫌がります。
逆に言えば成長意欲や挑戦意欲が高いことを評価し、プロジェクトに活かす方法を探ってみてください。具体的に言うと、プロジェクトを始める前に技術者と対話をし、「今回の方向性は○○だから、ここは守って欲しい。そのかわり、新しい技術(デザイン)に挑戦してみよう」といったことを話し合い、大枠を守りながら、範囲を決めて挑戦できるようにしてあげる。そして、あくまでも技術職の方の挑戦を応援してあげる姿勢を保つ。そうすれば、モチベーションを高く保ってくれるのではないでしょうか。
技術職の方にはメンタルコントロールが苦手な方が多く、なかなか思い通りに動いてくれることがなく、ストレスに感じるかもしれません。ただ、それにも理解を示し、上手に導いてあげて、気持ちよく働かせてあげることが重要なのではないでしょうか。
7.交渉力
プロジェクトの運用がどんなに上手くいっていても、クライアント側から急にネガティヴな意見が発生してしまい頓挫してしまったり、どうしても追加予算や日程が必要になることなどの緊急事態が起こることがあります。そうした場合は、クライアントの不安要素をヒアリングし、それをコミュニケーションにより解消しながら、できる限り両者にとってダメージの少ない形に交渉しなければなりません。
自社にとって不利な条件を全て飲んでしまってはスタッフにも余計な負担を強いる事になってしまい、自社の利益にも影響がでます。かといって、相手が不安を感じている状態なのに無理にこちらの条件を飲ませてしまっては、プロジェクトが無事に終ったとしても次の案件に繋がることは無いでしょう。
まずはコミュニケーションを十分に図り、時間をかけて不安をヒアリングすること。そして、現状の対策で結果が出ることを先方が納得がいくまで説明することが大切です。コミュニケーション不足が原因で、相手の不安に繋がっている場合がほとんどなので、対話をしっかり行うことで、問題が解決できるケースが多いのではないでしょうか。
また、 対話をしてもまだ問題点が残る場合は、自社として限界まで行える事や解決策を誠実に提示し、それでも対応が難しい範囲も説明します。その中で相手が納得する範囲を探ることが必要だと考えます。
もしそれでもクライアントが納得しない場合は、恐らくクライアントとWebディレクターが「目的」を共有しきれていなかったことが原因です。この場合は失敗を認め、クライアントにもスタッフにも自社にも謝罪を行い、プロジェクトを仕切りなおすしかないのではないでしょうか。こうならないためにも、事前に十分なコミュニケーションを行うことが最も重要と言えます。
8.責任感
プロジェクトが上手くいかないのは「クライアントが物分りが悪いから」でも、「スタッフの能力が足りないから」でもありません。全てはWebディレクターの能力と器が足りず、トップであるディレクターが責任をとっていないことが原因です。
知識保持者にはその知識を共有する義務があり、「相手がわかっていない」と考えるのは責任放棄に過ぎません。プロジェクトを運営していれば必ず問題は発生するもので、その際に他人のせいにするのではなく、必ず自分の責任と考える事です。そうしなければスタッフはもちろん、クライアントの信頼を得ることも難しいでしょう。
昔から言われていることですが、「優秀なスタッフが揃っていて、無能なリーダー」の組織と、「スタッフは普通だが、リーダーが一流」の組織では、後者の方がパフォーマンスが高いといわれています。
Webディレクターの能力や器以上にスタッフが実力を発揮する事はありません。もしプロジェクトが上手くいかないときには、まず真摯に自分に足りない所があるのではないか。自分が果たすべき責任を果たしてないのではないか。そう振り返る事が重要ではないでしょうか。
次回は、Webディレクターの3つの心構えについてお話をしたいと思います。
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