Web業界人コラム「唯一無二の存在になり付加価値を創造する」クレリア・デザイン 鈴木秀人

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  3. 自分の仕事の付加価値を考える 後編

多くの仕事はコモディティー化され、その付加価値は下がり続ける

多くのクライアントはそうした効率的に制作されたコストの安いサイトで満足して、それに満足できない資本力のあるクライアントが非常に優秀なクリエイターにデザインを依頼するような、2極化の方向に進むでしょう。

このようなコモディティー化の結果としてそうした仕事の付加価値は下がるしかないわけです。

正直言って、今後仮に日本の景気が回復したとしても、コモディティー化された仕事の付加価値は相対的に上がるはずもなく、ギャラの上昇は望めないどころか、下がり続けるという厳しい状況におかれると思います。

付加価値創造のためには、唯一無二の存在になれるかどうかが鍵

厳しいことばかり書きましたが、上記のような環境のトレンドに抗う術はないと言っていいでしょう。

そうした環境のトレンドにおいて、仕事の付加価値を維持向上させていくことは簡単ではありませんが、重要なことは、クライアントに対して自分自身が唯一無二の存在になれるかどうかだと思います。つまり自分自身の存在が代替不可と思われることが大事です。

こういう存在になれると、無益な競合などに巻き込まれることなく、付加価値を維持しやすくなります。

唯一無二の存在になるために必要なことはいくつもあると思いますが、自分は以下の3点をあげたいと思います。

1. 自分を磨くこと
2. 強みや特性を組み合わせること
3. クライアントの感情に入り込むこと

最初の「自分を磨くこと」は当たり前ですね。スキルが絶対的に優れていれば自分自身が代替不可の存在になれる可能性が高まります。みなさんは日々自己研鑽に励む前向きの方々だと思うので、こんなことは改めて言うまでもありませんが、地道な積み重ねが後から振り返ると大きな成長となって成果をもたらすので、付加価値を維持向上させていくには「自分を磨くこと」は絶対条件です。

しかし、自分の場合は保守的で変化への対応力に欠ける面があるので、早すぎる技術進歩のスピードに、正直キャッチアップすらできていないのが実状です。それでも意識して新しいことに取り組み、以前の自分の留まることなく亀のようにゆっくりでも前に進むようにしたいと考えています。

次の「強みや特性を組み合わせること」は、自分自身を生かせる独自の領域を発見することにつながります。最初に取り上げたように自分を磨くことは必要ですが、ある特定のスキルを一生懸命磨いて向上させたとしても、単独のスキルだけでオンリーワンの存在になれるのは本当にごく一部のプロフェッショナルに限られます。しかし、それぞれはごく一般的なスキルや特性であっても、それらを組み合わせることにより、オンリーワンに近づけることができます。

例えば、ある人が趣味でハードロック系の音楽に対する造詣が深く、更に前職で企画立案の仕事をしていたとすると、その人がWeb制作のスキルを磨いたとすれば、「ハードロック系の音楽の造詣が深く、企画立案のスキルが高いWeb制作ができる人」ということになり、そのような人はかなり絞られてくるはずです。

大雑把にそれぞれの特性やスキルを持つ人が世の中に10人に1人の確率でいるものと仮定して、3つの特性や強みを組み合わせると単純計算で1000人に1人の人間になるわけです。これは掛け算の論理ですが、このようにいくつかの特性や強みを組み合わせることにより、自分自身を生かせる領域が見えてくると思います。Web制作会社でも特定の業界での制作を得意としているところが多いように、フリーランスは更に自分の特性、Web以外の強みなどを組み合わせていくと、その領域ではクライアントにとって唯一無二の存在になれる可能性は高まるはずです。

最後の「クライアントの感情に入り込むこと」というのは、「いい人間関係を築くこと」とつながりますが、結局フリーランスが唯一無二の存在になれるかどうかはこの点がとても重要だと思います。自分がお付き合いしているのは非常に小さい法人ばかりなので、特に対面でのコミュニケーションを大事にして、取引相手先というよりは個人対個人のお付き合いをしているところがほとんどです。

もちろん、自分を磨いてスキル的な信用力を堅持しておかなければなりませんが、良好な人間関係を築くことで、クライアントと感情的なつながりができれば、Webに関する相談は全てお任せとなって、唯一無二の存在に近づけると考えています。Webサイト制作という作業自体は極端な話、クライアントとのメールのやり取りのようなオンラインだけでも完結してしまいますが、上記の点から、自分自身はオフラインの対面でのコミュニケーションを重要視しているのです。

以上、厳しい環境の中で、フリーランスが仕事の付加価値を維持向上せていくための心得のようなことを自分の視点でまとめてみましたが、内容は特にWebの業界に限った話ではないですし、当たり前のことばかりなので、改めてここでお伝えするまでもなかったかな~とも思いますが、自分なりの危機意識をシェアさせていただければと思います。

ご参考になる部分があれば嬉しいです。