イベントレポート2016.11.19
BOHRフェスティバル~文字のデザインから見るWebの未来~(第一部)

5/30(月)に「文字のデザインから見るWebの未来」をテーマにしたBOHRフェスティバルを開催しました。初開催となる今回は、4組のゲストをお招きし、「文字のデザイン」をテーマにお話いただきました。

まずは総務省の井下紘登氏をお招きし、「縦書きテキストレイアウトの標準化概要」について紹介していただきました。

文字のデザインから見るWebの未来

第一部:縦書きテキストレイアウトの標準化概要

総務省が縦書きに取り組んでいる理由

なぜ総務省は縦書きテキストレイアウトの標準化概要に取り組んでいるのでしょうか。まずは、その理由をお話いただきました。

「総務省は行政管理、情報通信行政、マイナンバーなど様々なことに取り組んでいますが、その取り組みの一つが『通信規格の国際標準化』です。『通信規格の国際標準化』とは具体的に電話回線形式、携帯電話の無線方式、近年だとWi-Fi、Bluetooth、HTMLなどのWeb技術の国際標準化の活動のことです。

こういった通信規格の標準化は、『ルールを作った人が有利になる』ということがほとんどです。たとえば、電話回線の利用環境であれば、自国の電波の利用環境にあったルールを国際標準にすれば現在の回線や番号などをそのまま使用することができます。総務省の情報通信国際戦略局通信規格課では、こういった通信規格の国際標準を、なるべく日本に有利になるように取り組みをしています。

現在、総務省が検討している国際標準化の重点分野はインターネットと物をつなぐ『IoT』という技術のほかに、HTMLやCSSなどのWeb技術も対象になっています。Web技術に関しては、現在W3Cが規格を作成していますが、総務省はW3Cと協力してWeb技術の規格作成に積極的に関与しています」

縦書きの概要と標準化の取り組み

縦書きの標準化を推進する取り組みにはどういったものがあるのでしょう。次にその取り組みについてお話いただきました。

「縦書きは新古今和歌集、小説、新聞、習字、マンガの吹き出しなど日本独自の文化に深く根付いています。

また、縦書きはデザイン性においても高い評価を得ており、レシピを縦書きにしたり、チラシの文字を縦書きにしたりすることでメリハリが利いてきます。縦書きの独自のデザイン性を高く評価し、使用するデザイナーもいます。

しかし、現状、縦書きが使用されているWebサイトはほとんどありません。なぜ使用されていないかというと、CSSの仕様が縦書きに対応していなかったためです。

縦書き標準化を推進する動きは今に始まったことではありません。今までの縦書き標準化の重大な出来事を年表にまとめました。

~縦書き標準化の年表~

1990年代末 総務省が縦書き対応の検討を開始
2000年 MicrosoftのInternet Explorerが縦書きを独自に実装
2010年 産学官で縦書き標準化の検討体制を連携設立
2011年 電子書籍ファイルフォーマット規格『EPUB』が縦書き対応をしているCSS3の仕様を参照する
2012-2013年 縦書きに関する仕様がW3Cにより、勧告候補になる
※2014年10月にふりがなを表現する<ruby>がW3Cにより勧告される
2015年 Firefoxブラウザが縦書きを実装し、すべてのブラウザで縦書きが実装可能になる

縦書きに関するCSS3の仕様は2016年5月現在、W3Cによって勧告候補になっており、ブラウザでの実装も進んでいます。また、日本文化に関するその他のCSS3の仕様も徐々に勧告されています」

縦書きWebサイトの事例

縦書きWebデザインアワードの作品

それでは、どういったWebサイトで縦書きは実装されているのでしょうか。

「総務省は2015年11月から2016年の3月まで縦書きWebデザインアワードを開催しました。その縦書きWebデザインアワードの受賞作品から、いくつかのWebサイトの事例をご紹介します。

縦書きWebデザインアワードの作品は箸置きのサイト、ホラーサイト、和菓子屋さんのサイト、年表のサイトなど日本の伝統を押し出したサイトが目立ちました」

今後の展望

「縦書きに関するCSS3の主要な仕様は勧告候補には上がっていますが、まだ勧告されていません。

勧告に進めるためには、縦書きWebサイトの事例を増やすことで実利用を踏まえたニーズをW3Cにアピールする必要があります。

この仕様がW3Cにより勧告されれば、Web上で日本独自の文化である縦書きが使用される場面も増えていきます。また、パソコン、スマートフォン、タブレットだけでなく、テレビや自動車、デジタルサイネージとよばれる電子看板やエアコンなどにもHTML、CSS、JavaScriptなどのWeb技術が適用されています。

仕様が勧告されれば、例えばデジタルサイネージなど、縦書きを使用できる範囲もどんどん広がり、日本独自の文化を広めることができるようになります。

みなさんもぜひ今後普段の生活に根付いている『縦書き』を発見してみてはいかがでしょうか」

プロフィール

総務省 情報通信国際戦略局 通信規格課 地域標準係長
井下 紘登 氏

[経歴]
W3C、IEEE、IETFなどフォーラムにおける国際標準化活動の支援・推進に従事。

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