コラム2013.02.23
自分の仕事の付加価値を考える

はじめまして。

卒業生の鈴木秀人です。クレリア・デザインという屋号でフリーランスとして活動し始めて4年ほどになります。

少々堅い話ですが、仕事の付加価値について取り上げたいと思います。

自分の仕事の付加価値を考える

どんな仕事もそうですが、特に自分のようなフリーランスという立場で仕事をしていると、自分自身の仕事の付加価値を常に意識せざると得ません。

クライアント(お客様)が認める付加価値がギャラ(報酬)という形で跳ね返ってくるわけですが、その付加価値がクライアントにとってギャラ以上のものであれば、次の仕事や紹介などにつながりますが、そうでなければ信頼関係は築けませんし、結果として継続して仕事をいただけません。 そういう意味では、前職で企業という組織体で安定的に働いていた時以上に、自分自身の仕事の付加価値を常に意識せざると得ないのです。

しかし、現在、そして今後私たちの取り巻く環境では、その付加価値というものは、自分たちが考えている以上のスピードで出しにくくなっていくだろうと思います。

それはなぜか?

キーワードは2つあります。
それは、競争とコモディティー化です。

フリーランスの付加価値はグローバルで測られる時代へ

競争は言うまでもありませんが、Web業界は他業界以上に非常に厳しい過当競争にさらされていると思います。非常に多くの業者やフリーランスが凌ぎを削っていることで、以前と同様の仕事の請負金額は下落傾向が続いています。

自分自身は基本的に元請けでやっているので、個々の作業の単価についてはよくわかりませんが、ネットで少し調べると、驚くような安い金額でサイト制作一式を請け負う業者もあります。そのおかげ?で、紹介をいただいても、紹介先がそうしたネットの情報を収集していると、「サイト制作一式◯万円以下ならお願いします。」みたいなことを言われて、お断りすることもあります。

そもそもその提示価格がものすごく低いこともありますが、そうしたことを言う人は、価格にプライオリティーを置いているので、継続していい関係が築けるとは思えないからです。

このように競争によって、仕事に対するクライアントの見方(価値の判定=価格水準)は厳しくなる一方となっています。

更に、グローバル化も追い打ちをかけます。同じようなWebの仕事を行なっている人はおそらく世界中に想像以上にいると思います。

例えば、東南アジアの人で同じスキルを持つ人がいたら、その人が請け負う方が間違いなく日本人よりも安いはずです。 日本人が日本語ができるという当たり前のアドバンテージだけで安穏とはしてられません。

今後は日本語ができる東南アジアやインドのWebデザイナーなども増えてきてもおかしくありませんし、プログラマーなどは実際そういう人も多くなっていると思われます。

自分はプライベートに英語のポートフォリオサイトを持っていますが、どうやって探し当てたのか、こんな膨大なサイトの中のゴミのようなサイトを通じて、セールスしてくる外国人のフリーランスもいます。こんな時、世界はまさにフラット化していると感じます。

彼らが日本市場においてどんどん競争に参入すれば、日本人にとってはますます付加価値は出しにくくなっていくでしょう。

そして、もう一つのキーワードはコモディティー化です。

どんな仕事も、効率化が図られ、結果としてこれまで人が行なっていた仕事はシステムや機械に置き換えられ、誰にもできる単純作業などは中国人などの外国人労働者によって担われていたりします。

Webの技術も日進月歩でどんどん進歩し、非常に早いスピードで作業の効率化が図られています。一昔前は特定のスキルを持った人だけができた仕事も、どんどん誰もができる仕事やシステムに置き換えられています。それがすなわち仕事のコモディティー化です。

将来的には世界中のサイトデザインのデータが整備され、クライアントの要望(カラー、レイアウト、イメージなど)を入力しさえすれば、AI(人工知能)を介してオリジナルのデザインカンプがいくつでも作成されて、自動的にコーディングも行われるだろうくらいのことは、改まってイノベーションと呼ばなくても想像に難くありません。

多くの仕事はコモディティー化され、その付加価値は下がり続ける

多くのクライアントはそうした効率的に制作されたコストの安いサイトで満足して、それに満足できない資本力のあるクライアントが非常に優秀なクリエイターにデザインを依頼するような、2極化の方向に進むでしょう。

このようなコモディティー化の結果としてそうした仕事の付加価値は下がるしかないわけです。

正直言って、今後仮に日本の景気が回復したとしても、コモディティー化された仕事の付加価値は相対的に上がるはずもなく、ギャラの上昇は望めないどころか、下がり続けるという厳しい状況におかれると思います。

付加価値創造のためには、唯一無二の存在になれるかどうかが鍵

厳しいことばかり書きましたが、上記のような環境のトレンドに抗う術はないと言っていいでしょう。

そうした環境のトレンドにおいて、仕事の付加価値を維持向上させていくことは簡単ではありませんが、重要なことは、クライアントに対して自分自身が唯一無二の存在になれるかどうかだと思います。つまり自分自身の存在が代替不可と思われることが大事です。

こういう存在になれると、無益な競合などに巻き込まれることなく、付加価値を維持しやすくなります。

唯一無二の存在になるために必要なことはいくつもあると思いますが、自分は以下の3点をあげたいと思います。

  1. 自分を磨くこと
  2. 強みや特性を組み合わせること
  3. クライアントの感情に入り込むこと

最初の「自分を磨くこと」は当たり前ですね。スキルが絶対的に優れていれば自分自身が代替不可の存在になれる可能性が高まります。みなさんは日々自己研鑽に励む前向きの方々だと思うので、こんなことは改めて言うまでもありませんが、地道な積み重ねが後から振り返ると大きな成長となって成果をもたらすので、付加価値を維持向上させていくには「自分を磨くこと」は絶対条件です。

しかし、自分の場合は保守的で変化への対応力に欠ける面があるので、早すぎる技術進歩のスピードに、正直キャッチアップすらできていないのが実状です。それでも意識して新しいことに取り組み、以前の自分の留まることなく亀のようにゆっくりでも前に進むようにしたいと考えています。

次の「強みや特性を組み合わせること」は、自分自身を生かせる独自の領域を発見することにつながります。最初に取り上げたように自分を磨くことは必要ですが、ある特定のスキルを一生懸命磨いて向上させたとしても、単独のスキルだけでオンリーワンの存在になれるのは本当にごく一部のプロフェッショナルに限られます。しかし、それぞれはごく一般的なスキルや特性であっても、それらを組み合わせることにより、オンリーワンに近づけることができます。

例えば、ある人が趣味でハードロック系の音楽に対する造詣が深く、更に前職で企画立案の仕事をしていたとすると、その人がWeb制作のスキルを磨いたとすれば、「ハードロック系の音楽の造詣が深く、企画立案のスキルが高いWeb制作ができる人」ということになり、そのような人はかなり絞られてくるはずです。

大雑把にそれぞれの特性やスキルを持つ人が世の中に10人に1人の確率でいるものと仮定して、3つの特性や強みを組み合わせると単純計算で1000人に1人の人間になるわけです。これは掛け算の論理ですが、このようにいくつかの特性や強みを組み合わせることにより、自分自身を生かせる領域が見えてくると思います。Web制作会社でも特定の業界での制作を得意としているところが多いように、フリーランスは更に自分の特性、Web以外の強みなどを組み合わせていくと、その領域ではクライアントにとって唯一無二の存在になれる可能性は高まるはずです。

最後の「クライアントの感情に入り込むこと」というのは、「いい人間関係を築くこと」とつながりますが、結局フリーランスが唯一無二の存在になれるかどうかはこの点がとても重要だと思います。自分がお付き合いしているのは非常に小さい法人ばかりなので、特に対面でのコミュニケーションを大事にして、取引相手先というよりは個人対個人のお付き合いをしているところがほとんどです。

もちろん、自分を磨いてスキル的な信用力を堅持しておかなければなりませんが、良好な人間関係を築くことで、クライアントと感情的なつながりができれば、Webに関する相談は全てお任せとなって、唯一無二の存在に近づけると考えています。Webサイト制作という作業自体は極端な話、クライアントとのメールのやり取りのようなオンラインだけでも完結してしまいますが、上記の点から、自分自身はオフラインの対面でのコミュニケーションを重要視しているのです。

以上、厳しい環境の中で、フリーランスが仕事の付加価値を維持向上せていくための心得のようなことを自分の視点でまとめてみましたが、内容は特にWebの業界に限った話ではないですし、当たり前のことばかりなので、改めてここでお伝えするまでもなかったかな~とも思いますが、自分なりの危機意識をシェアさせていただければと思います。

ご参考になる部分があれば嬉しいです。

この記事を書いた人

クレリア・デザイン
鈴木秀人さん

ご自身のキャリアプランを相談したい方へ無料体験レッスン開催中

インターネット・アカデミーでは、毎日無料体験レッスンを開催しています。授業の体験をしていただくのはもちろん、お一人おひとりにニーズにぴったりのコースや学び方を選ぶお手伝いをします。ぜひお気軽にお越しください。

インターネット・アカデミーとは

Webデザインやプログラミングなど、Web・ITが学べる通学制のスクールです。
1995年の創業以来、初心者を「最短距離で最前線へ」導くスクールとして、
これまでに25,000人以上の卒業生を国内外に輩出してきました。社会人でも短期間でスキルと人脈を得ることができます。

インターネット・アカデミー
公式サイトへ